死戦期呼吸とは
心停止が起こった直後には「死戦期呼吸」と呼ばれる、しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸をみかけることがあります。
目撃者のいる卒倒では55%の傷病者にみられるともいわれています。
死戦期呼吸を認めた場合には、心停止とみなして即座にCPRを開始する必要があります。
呼吸の有無ではなく、「正常な呼吸をしているか、していないか」で判断します。
ここで2つの過去事例をご覧ください。
事例1
明日香さん「ママ、大好き」母「何言ってんのー」。
2011年9月29日朝、小学6年生だったさいたま市の桐田明日香さん(当時11)は冗談交じりに母親の寿子さん(47)に投げキスをして、自宅を出ていきました。
その日の夕方、駅伝のメンバーを選ぶ選考会が校庭でありました。
明日香さんは全力で1千メートルを走りきった直後に突然その場に倒れました。
駆けつけた教師らは「呼吸がある」と判断し、担架で保健室に運びました。
救急車が到着するまでの11分間、心臓マッサージなどの救命措置は行われず、学校にあったAED(自動体外式除細動器)も使われることはありませんでした。
意識が戻らないまま、明日香さんは翌30日の夜、家族が見守るなかで息を引き取りました。
事例2
2017年7月21日、当時2年生だった女子マネジャー(16)が練習場所の野球場から約3・5キロをランニングして学校に戻った後に玄関前で倒れ、意識不明になりました。
女子生徒は普段、球場を行き来する際は、用具などを積み込むマイクロバスに乗っていましたが、この日はけがをした部員がバスに乗るなどしたため、監督が「マネジャーはマイペースで走って帰るように」と指示していました。
女子生徒が倒れた直後、駆けつけた監督は「呼吸は弱いけれどある」と判断し、救急車が来るまでの間、AED(自動体外式除細動器)が使用されることはありませんでした。
この女子マネージャーは同年8月5日に入院先の新潟市内の病院で亡くなりました。
死因は低酸素脳症だした。
いずれの事例も「呼吸がある」、「呼吸は弱いけれどある」と判断されました。
しかし、上記はいずれも正常な呼吸ではなく、「死戦期呼吸」でした。
死戦期呼吸は心停止の徴候で直ちにCPRとAEDを施す必要があります。
呼吸の確認
呼吸の確認方法は、医療従事者も市民救助者も同様で、傷病者を仰臥位として胸と腹部の動きを見て確認します。その際、気道確保は不要となりました。理由としては、気道確保に手間取って呼吸の確認がおろそかにならないようにするためです。
正常な呼吸をしているか、していないか判断に迷った場合、していないものとして直ちに胸骨圧迫を開始します。
仮に心停止でない傷病者に胸骨圧迫を行っても重大な合併症はおこらないとされています。
胸骨や肋骨の痛みを訴える場合はありますが、特別な治療を必要としないことがほとんどです。
迷ったら傷病者の顔を見ながら胸骨圧迫を開始して、痛がったらやめればいいのでCPRを試みるべきです。
最後に実際の傷病者の死戦期呼吸を動画でご覧ください。(動画はご自身の判断でご覧ください)
動画
まとめ
- 「死戦期呼吸」は心停止の徴候である
- 呼吸の確認は胸と腹部の動きを見て判断する
- 呼吸の確認を行う際は、気道の確保は不要
- 判断に迷ったら直ちに胸骨圧迫からCPRを開始する
コメント